おんな城主 直虎 第28回 「死の帳面」 感想


第28回  「死の帳面」 

◎かんそう

○「滅びゆく者達の物語にキュンキュンするなんて。これは何かの間違いだわ!(40代・男性)」

今回はよかった。「人気女優さん演じる”主人公・おんな城主”が、八面六臂・獅子奮迅の大活躍をして、最後はみんな笑顔。」みたいな?そんな視聴者をナメきったリアリティのないホームドラマより、「なんとか現状から脱却したいのに悪いことばかりがおきる。それでも可能な限りの対応、先を見据えての行動をする厚化粧のババアと世間知らずでイマイチ危機感がないボンボンの孫。当然、どんどん人が離れていく。ジリ貧の尻すぼみ。そして結局、滅びる。」そんなリアルな物語のほうがぜんぜんいい。

ただ、最後にオチがついて。「とはいえそこは百戦錬磨の今川の守護神・寿桂尼。表面では弱気なことを言いつつ実際は相手の品定めの作業をしていて、孫はそれをもとに粛清を断行していたのだった」。みたいな?たぬきっぷりを披露する?んだけど。今回はそんなベタなオチ(こういう表現・手法は日本のロボアニメにありがち。→「世の中は汚い・大人の世界は汚い」的な表現でリアリティを演出する手法)にせず、もっと叙情的に、「没落していく名家の哀愁」だけを際立たせる演出によせてほしかった。
「今回は番外編ですぅ。本編悪役側の物語ですうぅ」みたいなコトワリの入ったストーリーなんだし、脚本・監督は「滅び」に対してもっと儚いアプローチでせまってみせてほしかった。(表現や時間の制限はあるんだろうが、それでも「悪いやつは悪くて悪い」ではなく、「悪いやつがミジメでかわいそう・・なんでこうなっちゃったの?」って思わせるような気づかせるような演出にしてほしかった。)

○プニプニほっぺのボンボン

今川氏真公、イイネ!!役ではなく、役者さんがいい!「前髪フサフサ・背が高くホホのコケたワイルドなイケメン」とは対照的な立ち位置。「オレには何も無い。俺はハングリーな一匹オオカミだ!」みたいなことを言っても言わなくても、そのお美しいお顔とおスタイルでどのみちオンナやら視聴者やらから受け入れてもらえるイケメンの立ち位置とは対照的な立ち位置。
「一生懸命やってもなんかウケない、投げ出せば「やっぱりね」って言われ、うまくいっても「あいつは恵まれてるから」と小馬鹿にされて切って捨てられる、できてあたりまえ。を求められ続けるキャラクター。そんな人生にたいして疑問や不満を持っても「おまえは幸せだ、恵まれているからそんなことを考えられるんだ 」といわれつづけ他の選択肢を潰される人生。それに対する反発、葛藤。そんなこんなの氏真の思いが役者さんの演技からにじみ出て見えた。
氏真公のことをなにもわかってない俺にさえ「この役者さんは氏真公のことを調べて勉強して、こういうキャラとしてこちらに伝えたいのかも・・・」なんて。そう感じさせる演技、表現をいただけました!ヤケクソに踊る痛々しい姿なんてL・Aのダンスパフォーマンス賞に値しまっせ!「滑稽」を形にして、映像に残し、観ている者に訴えかける。”表現者”って、凄い!!!

○その氏真公ですが。

誰かが「今の今川家の周落」の話をしてると、(至らない自分の悪口では・・)という疑心暗鬼・被害者妄想におちいる。

さらに(そもそも悪口だったのか?自分は相手の言葉に過剰反応してただけかも?だとしたら相手の言葉にに振り回される自分はなんて弱いんだ)
ってなって、

(いや、そもそもあれは悪口だった、「悪口じゃなかった」なんて思う自分はなんて厚かましいご都合主義者なんだ・・)
ってなって、

(自分は、今こんなふうに悩んでいること事体に酔っているのでは?こんなこと考えてる時間があるなら働いて結果をださねば)

ってなって、

働くんだけどまったくもって結果がついてこず、誰かがヒソヒソ話をしているのを見て、(至らない自分の悪口では・・・)という疑心暗鬼に陥り、の無限ループ。

(´A`)ウツワじゃないからトップを代えよう・で済まないところが世襲制のツライところですな。


寿桂尼様。いちいち演技しないで普通にしてても死にそうなのに化粧して演技するからものすごい死にそう感!

そんな寿桂尼様が倒れて、氏真っちの指示で「元気をだしてもらおう」的なノリで、みんなで楽器演奏するんだけど・・・

(今はそんなことをやっているときか?)みたいな?なにしちゃってるの感がハンパなかった。

でもそんなズレたところも氏真っちらしいっちゃらしいか。

武田信玄のコスプレ

似てた。最近のトレンド?なんかあんまり肖像画とかにこだわらず現代風の偉人キャラクターが主流みたいだけど、こういう似せる演出も大事にしてほしいよね。

○信玄の姉と氏真の妹

あんまりにも氏真っちが「おばあさま、おばあさま」って言ってるから、(どんだけおばあさんLOVEなんや!!あれ?氏真っちのママって?)って思って調べてみたら、氏真っちのママはなんと武田信玄の姉。で、1550に病死してました。(ドラマは現時点で1567年だから7年前ですな)「大河ドラマ武田信玄」でそういえばやってた、完全に忘れてたけど。

○「大河ドラマ武田信玄」といえば

氏真っちの妹の引き取りに絡むゴタゴタ、「大河ドラマ武田信玄」とはぜんぜん違う流れだった。今作のほうが現実的。(「大河ドラマ武田信玄」では、好きにしていいんだよ。静岡に帰るなら送るよ?みたいな流れで。しかも観ていてその流れになんの疑問ももたなかったわ。わしゃアホじゃ)

○アホと言えば

今回、デスノートに名前をかかれて粛清されちゃった水野弥平大夫って人、前回、前々回で気賀を治める治めないで揉めた大沢基胤って人かと思った。みんなそうだと思って職場でおばちゃんに聞いてみたら「そんな区別もできないのは俺だけだ」、とのこと。(´A`)<マジか!軽くショック

○今週のやってみなければわからない
(´A`)ナシ

◎おまけパート→神奈川県小田原市(北条氏が5代にわたって拠点としていた地)

小田原城址公園

関東で一大勢力を誇った北条氏が代々居城とした//明治に解体され、遺構は石垣・土塁・堀//現存の建築物は近世に復元されたもの

北条早雲公像

小田原駅・西口ロータリーにある銅像//公が得意としたとされる「火牛の計(たくさんの牛にたいまつやら刀やらをくくりつけ敵陣につっこませる戦術)」がモチーフ

北条幻庵屋敷跡・久野

北条氏初代・北条早雲の四男の「北条幻庵」が、久野という地域にかまえていた広大な屋敷があったといわれる場所

○一節切(ひとよぎり・小田原城天守閣 寄託)

北条幻庵が自作したと伝わる尺八の一種//幻庵切りとも呼ばれていた//

北条幻庵覚書(世田谷区立郷土資料館 蔵)

嫁いでいく北条家の娘に幻庵が渡した覚書//嫁ぎ先での振る舞いなどを細かく指南したもの//

○行きたいレベルA

幻庵とかどうでもいいが小田原城址はぜひ行きたい。たとえろくなものがなくても北条氏ゆかりの地はいっておきたい。(今生の思い出に現地で汁かけ飯を食べるのだ)


◎覚へ書き

○歴史パート:

1567.義信事件。山梨県の大名・武田信玄と嫡男の武田義信が対立。義信が幽閉され最終的に自害した(病死説も)

○ドラマパート:

武田義信が自害。今川氏真の妹・「すず」は武田義信に嫁いでいたのでこのまま武田家に残ると人質となってしまう。そのため今川家が引き取り工作。まず老いと病をおして寿桂尼みずからが山梨県の武田家へおもむき引き取りを要求したのち神奈川県の北条家に仲介を要求し武田家に圧力//今川が武田に「裏切りません」的な誓約書を提出することを条件に「すず」の引きとりが成立。しかしこの理不尽なやり取り(裏切った相手に「裏切りません」という手紙を書くこと)に憤慨する氏真と「世の中こんなもんだ」的大人対応の祖母・寿桂尼の間に軋轢が生じ氏真が拗ねて政治の職務を放棄ぎみになる→しかし寿桂尼が倒れ状況・環境を自覚//主人公、商業都市・気賀に新築した 城の管理・運営の代行を家臣・方久にまかせる//「今川は没落する、それを防ぐための今川の戦争に狩り出されないために今川に代わる主君を探さないとヤバイ」という鶴くん//主人公が寿桂尼に呼び出され面会。思い出話や「これからも今川を助けてほしい」的な話をされる//主人公のみならず、属国家臣との面談を繰り返す寿桂尼。その真意は実は「潰したほうがいい家臣・残したほうがいい家臣」の選定だった。しかも寿桂尼は主人公に「潰したほうがいい」の判定を下す//主人公、「武田による今川侵攻を避けましょう・そのために現在の同盟相手の織田ではなく上杉・今川・北条と同盟を組みましょう」的な手紙を徳川に出す//つづく

◎おべんきょう

○じんぶつ(○→メジャー:△→マイナー:×→無名)

武田信玄:(1521-1573) 武将・大名:甲斐国領主・躑躅ヶ崎館(つつじがさきかん)(山梨県

山梨の大名・武田信虎の嫡男として誕生/15歳・京都の名門の娘と結婚(信玄は12歳ですでに結婚したが相手は難産で死亡している)/15歳・初陣(海ノ口城攻め・長野県)/20歳・父で甲斐領主の武田信虎を追放、領主となる/21歳・長野県に侵攻、領地を広げる/27歳・上田原の戦い(●武田vs村上義清○)/33歳・三国同盟(北条・今川・武田の同盟)/39歳・桶狭間の戦い(直接は関係なし)/40歳・第4次川中島の戦い(○武田vs上杉●)/45歳・箕輪城の戦い(○武田vs長野業盛●)勝利、グンマーの一部を制圧/46歳・義信事件(嫡男が謀反→死刑)←いまここ/47歳・駿府攻め(○武田vs今川●)勝利、静岡を制圧/51歳・上洛戦開始。 徳川を破り(三方ヶ原の戦い・○武田vs徳川●)岐阜に向かおうとするが・・・/53歳・病死(銃撃説もあり)

×鈴(嶺松院・****-1612):今川氏真の妹・武田義信の妻:駿河静岡県)・甲斐(山梨県

今川義元の娘として産まれる(母は武田信玄の姉)//1550.今川家と武田家の同盟の証だった縁戚関係が消滅(今川の人質だった武田側の人間が死去)//1552.同盟維持のため今川義元の娘・嶺松院が武田信玄の嫡男・武田義信に嫁ぐ形で縁戚関係を構築//****.一女を儲ける//1560.桶狭間の戦い(愛知県:○織田vs今川●)父・今川義元が戦死。//1565.夫・武田義信が幽閉される//1567.武田義信・自害。嶺松院は娘を連れ故郷の静岡県にもどり出家←いまここ//1568.武田信玄が今川家領地に侵攻、今川は敗北、地位と領地を奪い取られる//1612.死去。(1568から1612までの動向は不明)

×北条幻庵(北条長綱・1493-1589):武将・僧:相模、金剛王院・北条幻庵屋敷(神奈川県)

北条家初代の4男として産まれ幼くして僧籍に入る//25歳・兄・氏綱が2代目北条氏の家督を継ぐ//31歳・出家。政治家としても活動//48歳・甥の氏康が北条家家督を継ぐ//66歳・甥の息子の氏政が北条家家督を継ぐ//74歳・義信事件←いまここ//87歳・甥の息子の息子の氏直が北条家家督を継ぐ//96歳・死去(諸説あり)
北条5代に仕え一族の当主を政治的な面で支えた一方で、絵師や連歌師など、多くの文化人との交流があった。馬術や弓術に優れ、手先が器用で教養もあり、大名家でありながら平民とも気さくに話す、俺の最も嫌いなタイプの人間だったらしい。(せめてブサイクだったことを願う)
この人を狂言回しにして北条5代のドラマを作ったらわかりやすいかも。

×水野弥平大夫(****-****):武将(今川家臣):

書面上に名前が残ってるのみの人(「(今川配下でありながら)武田に内通していたので処刑した」という書状)//徳川家康の伯父//ウィキに項なし//