戦場のメリー・クリスマス レビュー捕捉


全体的に表現が半端。当然、意図的に抽象的に仕上げたのではありましょうが。

何かいいたげだけど

何がいいたいのかピンとこない

もうちょっとふみこんで観てみようかとも思うけど、単純にそれほど面白い内容でもないので2時間あるなら他のことをしたいとも思ってしまい、

しっかり向き合って自分なりに監督の意図を追及してみよう、とまで思えない。

言っていることはわかる、でも言いたいことがわからない、みたいなモヤモヤ感パない。何故、抽象的にしたのだろう。

個人的には言いたいことは相手にわかるように言ってほしいと思う。たとえば作品を崇拝するあまり監督がミスしてしまったカットまで勝手に脳内変換解釈して手放しで評価するような人に俺はなれないから。

○よく(あるいはまったく)わからなかったこと

人によって解釈が違うので自分で観てわからないからといってググッて調べたところで明確な答えがあるわけではないだろうし、原作読んだらわかることなのかもわからんが、まあとにかく

○{3:}セリアス銃殺の件

仮に空砲だとして、なんでその経緯の説明のカットをいれなかったのか。他の、感性に訴える表現はしかたないとしても、ここは前後で説明描写いれないとダメでしょ。

○{3:}の銃殺刑の前のセリアズのパントマイムがもつ意味

これで泣いたという人もいればここで意味がわからず引いちゃった人もいるみたいだけど?まさかボウイさんがやりたかったから、とかではないよね?

○{13:}獄中ででロレンスが話した女の話は何を暗示するのか

彼女は幽霊だったとか?でもだったらなんだっていうの?

○「歌が歌えたら・・・」というセリアズ。なにを示唆するのか、なぜ{16:}のあのタイミングで言ったのか、{9:}で音痴っぽい描写もあったけどそれもなにか暗示?

あと、初見だとセリアズの弟さんが障害もちとわからなかった。まあ大筋に支障はないとは思うが


ながれ

0:1942年、ジャワ島の日本軍捕虜収容所。主要キャラはヨノイ大尉・ハラ軍曹・セリアズ少佐・ローレンス中佐の4人

1:収容所で日本兵がオランダ人捕虜にカマ掘ろうとして捕縛。「恥ずかしい奴だ、腹斬って詫びろ」というハラ軍曹、日本人はナンセンスだと騒ぎ立てる外人捕虜たち、そこに所長のヨノイ大尉登場、処分は一時保留

2:反抗的な態度のセリアズというイギリス軍少佐が日本軍に捕縛、裁判を受ける。ここで微妙な音楽が流れて裁判に同席したヨノイがセリアスの姿を見て乙女っぽくソワソワ。(←あくまで俺の主観、初見時は気づかなかった)

3:正規の兵・軍の指揮下で行動中に捕縛されたなら捕虜、軍と関係なく日本の施設を襲撃したなら犯罪。セリアズは前者を主張するも日本法廷は一方的に死刑を宣告、銃殺刑が執行されるも生きているセリアズ。銃殺は形だけのものだった(理由は劇中に説明がないのでワカラン)

4:ヨノイの管轄する収容所に運ばれたセリアズ。ヨノイは、日本語が話せるローレンスに、セリアズがどんな男かを聞いたのち、彼を介抱するよう指示。(セリアズに対してなにかしら興味をもっているヨノイ)

5:「捕虜の中で兵器に詳しい者をリストアップしろ」とヨノイが捕虜長に命じるも捕虜長は応じず(ヨノイと捕虜長の険悪な関係)

6:ハラとローレンスのやりとり「捕虜になるならなぜ死なない」「捕虜になることと死はイコールではない」

7:鬼気迫る様相で剣の稽古に励むヨノイ、漏れ聴こえる気合の声に怯える捕虜たち、「セリアズが収容所にきてから様子がおかしい」と口にするロレンス

8:ヨノイ、{1:}で処分保留していた日本兵切腹させる、捕虜たちが強制的に立ち会わされ一人がショックで?舌を噛みきる、非人道的だと反発する捕虜たち、「おまえたちは日本の精神がわかっていない」的な逆ギレ?「自分の判断に文句をつけた罰」?よくわからないがとにかく、ヨノイは収容所全員に48時間の”行”という断食の修行を強制させる

9:セリアズが断食修行に反発、花と饅頭をもちこみ日本兵の前で食べて独房送り、この時に無線ラジオも発見されローレンスも拘束

10:青年兵が独房のセリアズを殺そうとするもセリアズこれを返り討ち、ローレンスを連れて脱走

11:ヨノイに見つかる、セリアズ持っていた刃物を手放す、「なぜ戦わないのか」とヨノイが問う、そこにハラら日本兵参じ発砲しようとする、ヨノイこれを制しセリアズとローレンスを牢にもどす、{10:}の青年兵は「セリアズがヨノイの心を乱している、だから殺そうとした」と言い残し切腹

12:発見された無線ラジオは誰のものかわからないのでローレンスが持ち込んだものとして死刑にする、とヨノイに宣告され独房に入れられるローレンス

13:隣の独房にいたセリアズと話すローレンス
ローレンス:シンガポールで出会った女の話
セリアズ:過去に弟を傷つけ、許されぬまま今に至るという話

14:独房から連行されたローレンスとセリアズはハラから「今日はクリスマスで、私はサンタだから」と、釈放を言い渡される(ハラは酒に酔っていた、独断で行動するのに酒の力を借りたのか、酒に酔った勢いで釈放してしまったのかはワカラン)

15:独断で二人を釈放したことをヨノイに釈明するハラ「ラジオは真犯人が見つかった、その真犯人はすでに処刑した、自分は酔っていてセリアズも一緒に釈放した、判断そのものは間違っていたとは思わないが罰は覚悟している」とのこと

16:{5:}の流れで再び捕虜長と揉め激昂したヨノイ、捕虜全員を集合させる。重病人まですべて整列させ、全員の前で捕虜長を斬ろうとする

17:そこにセリアズがでてきてヨノイの両頬にキス、ヨノイは錯乱、失神。セリアズは日本兵に囲まれフルボッコ、生き埋めの刑?にされる

18:ヨノイが人知れずセリアズの髪を少し切り取り、懐に忍ばせる/弟のことを思い起こし、生き埋めにされたままセリアズが死ぬ。

19:それから4年後の1946年。日本は敗戦、ヨノイはすでに死刑。ローレンスが死刑前夜に(くしくもその日はクリスマス)ハラの独房に訪れる

20:ハラは顔つきも性格も丸くなり、英語を話せるようになっていた。セリアズのこと、ヨノイのこと、クリスマスのことなど会話を交わした後、立ち去るローレンスに、明日死刑になるハラが言う


「メリークリスマス!メリークリスマス!Mr、ロレンス!」


おちまい


かんそう

意味がわからない、と文句を言う人と

的外れな解釈をして、あのシーンは深い、泣いた、とかいってる人と

恥をかかないように世間の評価をうかがう人 ←俺

にわかれるのか?


○価値観が違う国との衝突?

例えばラストのハラの心中の解釈。死をうけいれていた?命乞いしたかった?外国人の解釈はどうなんだろ。日本では真っ二つ?なのかな。

子供の頃一回みて、まったく意味がわからなかった。(この映画ではこういう感想を特によく耳にする)子供の頃は、この作品のいわんとしていることがわからないのは自分だけだ、恥ずかしい、と思って人に意味をきけなかった。でも現実はみんなよくわかってない、もしくは解釈が別れてるじゃんね。子供の頃の俺にそうおしえてあげたいよ。

まあとにかく。そのときは子供なりに「戦争の悲惨さを伝えたい作品なんだろう」「戦場だけでなく収容所も大変で、日本人は悪いことをしてたんだなあ」、みたいな当時主流だった自虐の歴史観の確認をした程度。

あとは北野武さんが怖い役なんだけど。どうしても漫才師のイメージが先行しちゃって作品に集中できなかった印象。役そのものとしては「さんざん偉そうにしておいて、自分が捕まってからいい人ぶっても遅えよ、ざけんな軍人!」って思った記憶がある。規律違反で処刑した兵を戦死扱いにしてあげることで兵の家族に手当て金が行くように計らってあげるっていうくだりもなんかウラがあるんじゃないの?なんて思っていた。

子供の頃は属国がどうとか同性愛がどうとかなんてまるで知らなかったから、ローレンスは日本軍とも捕虜とも上手くやってる人、程度。セリアズはまあ漠然と仲間思いで悪の日本に決して屈しない人、ヨノイの行動はまったく理解できなかった。

でも今観ると、ローレンスは本物の博愛精神の持ち主だね。「誰も悪くない、みんな犠牲者」なんて勝者なら言えそうなセリフだけど、どん底、最悪の状況でも「個々の日本人を憎みたくはない」といえる心は美しい。

当時、銀幕には縁が薄かった北野武坂本龍一を起用した監督の先見の明、と思いきや、他の俳優さんたちにオファー蹴られた結果としての配役だったのね。まあ世の中そおいうことも多いのでありましょう、この経験をものにしてビッグになった御二方に感服すべきか。

御二人の演技がしょっぱいという感想がほとんどだが、俺はヨノイさんは上手だと思ったなぁ。法廷ではじめてセリアズを見たときのドギマギさとか、セリアズにハグされたときの表情とかよかったし、セリフも昔の日本人、とくに軍隊はああいう喋り方なんじゃないか、なんて思ったりしたし。

ただローレンスさんの日本語はダメダメ。吹き替えにするべきだった。

惹かれる、沸き起こる自分の感情が理解できない、セリアズをどうしたいのかわからないヨノイ。

とりあえず「こんな男の中の男がなぜ捕虜に、その理由がどうしてもききたいから」と自分を正当化できる理由を作ってセリアズと接していたのかな・・

○ここがヘンだよニホンジン

「誰かが持ち込んだラジオの責任をとにかく誰かがとれ!」

重病人に向かって「貴様らは病気ではない、貴様らは嘘をついている」と叫び殴るヨノイ

俺はそういう世代に育てられたから、理不尽だと思う反面そんなもんだ、とも思う。自分が空手をやっていて、気合で肉体をなんとかする、という思想に染まってしまったのもあるかも。

○「セリアズはヨノイの心に実のなる種を蒔いた」

ロレンスに素直にセリアズの髪を託したってことは自分の気持ちを認めた、うけいれたってこと?同性だから
ちょっと響きがおかしく感じるけどまあ、つまり敵同士でも愛は育める、ということ?

でもヨノイ死刑になってるのに実もなにもないじゃん、とも思うなあ。

あと、ヨノイは髪をセリアアズの遺族に渡して欲しい、ではなく自分の故郷の神社に奉納してほしいとか、ちょっと違和感。

○「Merry Christmas, Mr. Lawrence」

最後のシーン。そういうふうに見てるからかもしれんが、たしかに「僕、明日死刑ですハハハ」って人間の顔に見えた。ミジメな、でも笑顔の「まるで泣いているように笑う」なんともいえない表情。

最後、ハラさんが命乞いしたかったのか死を覚悟していたのか、どちらに感じるかでその人の人間性がわかる・・とかならちょっとしたロールシャッハだな。

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